休日に、従業員を安全管理に関するセミナーに出席させるのですが、セミナーの時間は4時間位、会場が遠隔地で、当社から往復する場合、合計5時間ほどかかります。出張扱いで休日1日分の賃金を支払うという処理で問題はないでしょうか?
研修・講習等は通常業務と性質が異なりますが、業務命令として参加を強制した場合、労働時間に該当します。セミナーの費用、交通費等を会社が負担するのは当然のことですが、そのほか、休日に参加させた場合には、所定外勤務として賃金を追加で支払う義務が生じます。
このケースでは、セミナー自体は4時間ですが、会場への往復に5時間を要するということです。こうした勤務形態の場合、どの様に賃金を計算すればよいのでしょうか?
多くの会社では、就業規則中に、「出張の場合には、所定内労働時間働いたとみなす」という規定を置いています。出張中は、勤務時間が途切れ途切れになりがちで、かつその時間把握も困難です。ですから、一律、所定内労働時間働いたと見なし、賃金管理の簡便化を図る趣旨です。
これは労基法第38条の2項に根拠があります。同条では「事業場外で業務に従事した場合において、労働時間を算定しがたいときは所定労働時間労働したものと見なす」と定めています。ですか、一般に出張にでれば、いつでも「みなし労働時間」処理が可能なわけでもありません。 あくまで、「労働時間を算定し難い」という条件を満たす必要があります。
遠隔地で開催されたセミナーへの参加を命じた場合、出張扱いで1日分の賃金を払えばよいかというと、単純にそういう結論にはなりません。セミナーは、予定されたスケジュールに従って実施されます。何時に始まって、何時に終了したか、時間把握が可能です。
事業主は、出張中の賃金計算をする際、実労働時間主義を採るか、みなし労動時間制を採るか、任意に選択出来るわけでもありません。実労働時間を把握できるときは、みなし制を適用することは出来ないのです。
次に検討が必要なのは、セミナーに要した4時間分の賃金で十分か、あるいは移動時間もふくめた9時間分の賃金が必要か、という問題です。
移動時間は物品の監視など特段の指示がない限り、労働時間に含まれません。ですから法的にはセミナーに参加した4時間分について、割増も含めた賃金を支払えばそれで足ります。しかし従業員側としては、往復時間も含め丸1日を費やしたのに、4時間分の賃金では割りに合わないと感じるでしょう。
不公平感を和らげるため、みなし時間」制による事なく、8時間分の賃金を支払のは、法を上回る処理ですから、もちろん問題ありません。その様な処理をしない場合にも、休日手当など別名目の手当を支払うのがベターです。